「修羅天魔 ~髑髏城の七人 Season極」感想②(もはや夢さん語り)
続きです。重いです。
竜星涼さん as 夢三郎
ぶっちゃけ夢三郎の正体も無界の存在意義も知った上で見ていたのですが、それでも「若衆太夫の夢三郎」から「伐折羅の夢虎」への変貌は本当に凄かったです。
一幕の夢三郎は、男とか女とかそういうのを超越した美しさでした。所作や表情や声色が本当に艶やかで……扇子をひらひらさせるのが色っぽくてダメです……。さすが一番人気の太夫だわ。
「歌が……」的な声があるのも知っていましたが、十年以上推してるJ事務所の某アイドルさんが歌唱力の安定感に若干欠けているのもあり()、全然許容範囲内でした。イイ声ですし推せます。美しさは正義(盲目おたく)。
その後の展開が分かるだけに、兵庫との会話や無界の里を讃える言葉がしんどくて。「でなけりゃこんな里は護れねえ」って言った時、どういう心境だったんですか?
二幕の夢虎は、もう立ち姿から全然違いました。一気に男。声もドスが効いててオラオラ。女性ものの着物でも顔の小ささはよく分かったのですが、真っ黒の鎧を纏ったら手足の長さが如実に現れるので、「これがパリコレクオリティ(?)……」と変な事を考えました。
でもそんな雑念が吹っ飛ぶぐらい無界襲撃シーンは怖かったです。何が怖いって、全力で慈悲の欠片もなく殺戮しまくっているところ。荒武者隊の一人をぶっ刺してグリグリするところなんかドン引きしましたもん。そこまでするか?と。
最後の髑髏城での戦いも凄まじくて。あんなに気心知れてた兵庫にも容赦がありません。それでもスラリと長い手足から繰り出される豪快な殺陣には惚れ惚れせざるを得ません。ごめん兵庫。
天魔王の鎧が偽物だと悟って、膝をついて泣いている様な声で「父上……」と呟く後ろ姿に、とても胸を締め付けられました。額からダラダラと血を流しながら腹を切る壮絶さに息を呑みました。
頑なに天魔王と「武士」に固執していた彼の本心は、最後の最後まで分かりませんでした。思考を巡らせば巡らすほど。
許されざる子として生まれ、母親が死んだ時には見向きもしなかった父親を崇拝し、やりたくもない男娼をやれと命じられ、彼曰く「雑魚」の集まる無界の里に君臨し続けた夢三郎は、何を思って生きていたのでしょう?
父親に偽物の鎧を着せられ、百姓だと見下していた兵庫に刀を折られ、それでも武士として/天魔王の息子として腹を切った夢虎は、何を思って死んでいったのでしょう?
かつて義兄弟の契りを結び、彼の侠気に惚れていた兵庫は、その最期に何を思ったのでしょう?
燃え落ちる髑髏城が映るスクリーンを見ながら、城中でひとり倒れている夢さんの亡骸を思い浮かべ、そんな事を考えていました。
とても哀しかった……。
竜星くん、本当に素晴らしかったです。
色々なインタビューで「この作品が役者としてのターニングポイントになる」と話していただけあります。
そんな作品を自分の目で観られて良かったです。